ボクはゲームを殆どやらない。
我が家で買ってもらえたゲーム機はファミリーコンピュータのみで、そのファミコンでさえ使用を禁じられ、隠された。
兄は友人からスーパーファミコンや他のゲーム機とソフトを借り、共働きの両親が帰って来るまでゲームをやっていたが、ボクにはロールプレイングゲームでのレベル上げしかやらせてくれなかった為、つまらなくなり自然にゲームから離れて行った。
ボクが家でゲームをやる事はほぼ無く、ゲームをやると言えば、それは専ら友人宅だった。
まあ、兄のいる人あるあるだろう。
ゲームにどっぷり浸かる事無く育ったボクには、クリアした事のあるRPG(ロールプレイングゲーム)は無かった。
そんなボクが初めて、そして唯一クリアした事のあるRPGが『ゼノギアス』である。
それは大学生の頃、確かPS1が発売された時だったと思う。
PlayStationは高価で買えなかったが、PS2が出た後に発売されたPS1はPlayStationより大分安かった。
ボクはそれを使い、夏休みに『ぼくの夏休み』なんかをやっていたのだけれど、有り余る時間の中で、小さな頃に果たせなかったRPGをクリアしてみたいという想いが湧いてきた。
大学近くにあった小さなゲームショップへ行き、ソフト探しを始めた。
まずはビッグネーム、『ドラゴンクエスト』シリーズ、『ファイナルファンタジー』シリーズ等を物色。
そして当時流行っていた『テイルズ』シリーズ等々を見て行く。
しかしどれを見ても、捻くれ者のボクにはピンとこなかった。
どうにも入り込める気がしないのである。
何というか、ファンタジック過ぎると感じていた。
そんなボクが、ケースの裏の説明を見てこれだと思い、購入したのが『ゼノギアス』だったのである。
FFシリーズを出しているスクエアから出ている為、難解で大人向けな世界観であろう事は想像できたし、何より信頼できた。
ケースの裏に書かれていた文言がこれだ。
「忘却の彼方より
繰り返される悲劇。
輪廻と再生。破滅と癒し。
神とは何か?
その意図するものは?
GOD ONLY KNOWS」
内容はよくあるRPGの骨組みに、SFと哲学を組み込んだものであった。
神とは何か?
人間とは何か?
自分とは何か?
世界とは何か?
生きるとは何か?
愛とは何か?
……。
当時、自分への考察を深めて行ったボクに刺さった。
それはまるで一冊の物語を読んだような。
また、壮大なアニメを観たような。
『ゼノギアス』がきっかけとなり、ボクは自分への考察を加速させた。
ボクにとっての『ゼノギアス』は、ただのゲームではない。
そういう存在になったのである。
その後、FF7を友人に借りやってみたが、やはり世界に入り込めなかった。
『ゼノギアス』は、RPG特有の嘘臭さがあまり無いのだ。
ファンタジックさと置き換えてもいいと思うが。
何というか、妙にリアリティがあるのである。
そうであってもおかしくないと思わせるものが、そこにあるのだ。
勿論、ボクにとっては、なのだが。
ネットで見てみると、『ゼノギアス』には熱狂的な信者がいるらしい。
神ゲーとまで言われている。
だが、別の人は糞ゲーだと言うし、厨二の最たるものという人もいる。
それに対して、厨二じゃないRPGは存在するのか?なんて、至極真っ当な意見も見受けられる。
まあ、本人がいいと思えば神ゲーだし、そうじゃなけりゃ糞ゲーなんだろう。
RPGズレしていないボクには、『ゼノギアス』の他と違う部分を否定的でなく、肯定的に捉える事ができたのかもしれない。
何よりも、ストーリーがボクにハマったのだけれど。
ボクにとって、ある種バイブル的なものなのだ。
ある人にとっての小説がそうであったり、
ある人にとっての映画がそうであったり、
ある人にとっての漫画がそうであったりするように。
取材され、テレビ番組放送となってより、何も出来なくなっていた。
ただ時間だけがそこにあり、金は無い。
ただただ横たわるだけの日々。
そんな時、ボクの目に入ってきたのは、函館時代、美容学校の同級生がくれたPS2だった。
ゲーム機があっても、触れる事が無かったが、何も出来なくて時間があるのならゲームでもしてみようと思い立ったのだ。
やるのは勿論、『ゼノギアス』。
早速Amazonで探すと1円からある。
流石に怖いので、100円のものを購入。
当時2度クリアしているので、今回で3度めの挑戦となる。
やり始めて1週間ほどだろうか。
遂に昨日、クリアに至った。
この行動が、今のボクにとって、何を意味するのかは全くわからないが、とにかく必要だった。
そう思う事にする。
ゲーム好きの中で神ゲーとまで言われている『ゼノギアス』だが、やった事のある人に出会った事が無い。
是非、やってみてほしい。
『ゼノギアス』は、ゲームを超えている。
あ、作中の『飛翔』という曲が、良いところでかかるんだが、とても盛り上がる素晴らしい曲なので、その辺りも楽しんで頂ければと。